迷子の猫ちゃんの初恋

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あのとき助けられたのは私ともう一人の友人だけなのに、関係ない子たちまでもシバケンに気安いのはいい気持ちではなかった。 学校帰りに交番の前を通るときは自然とシバケンを探してしまうようになった。彼がいたからといって私一人のときに話しかける勇気なんてなかったけれど。 交番を直視できず目を伏せて横切る私に気づいたシバケンは軽く手を上げて挨拶してくれた。 「あれ、今日は一人なの?」 「はい……」 イスに座っていたのにわざわざ立ち上がって交番の外に出てきてくれた。その姿に気持ちが高揚する。 「少し落ち着いた?」 「え?」 シバケンの質問の意味が分からなくて聞き返した。 「駅で怖い思いしたから、もう落ち着いたかなと思って」 ホームで酔っぱらいのおじさんに絡まれたことを言っているのだと気がついた。 「覚えててくれたんですか?」 「そりゃそうでしょ。ほとんど毎日ここに来てるから顔も覚えるよ」 そう言ってシバケンは笑った。 「また何かあったら言ってきなよ」 「はい、ありがとうございます!」 嬉しかった。私の顔を覚えていてくれたこと、気遣ってくれたことが。 「かっこいいですね……」 思わず声に出た。シバケンはきょとんとして私の目を真っ直ぐに見返した。 「あ、あの、警察官ってかっこいいですね!」 慌てて言い直した。警察官はもちろんかっこいい。けれど今の私の発言は『警察官』に向けてではなく『柴田健人』に向けての言葉だったから。 思ったことをつい言ってしまった。恥ずかしさのあまり私は下を向いた。
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