すれ違う気持ち(シウス)

6/7
522人が本棚に入れています
本棚に追加
/149ページ
「確かに知らぬ。お主のような甘っちょろい人生など送ってはおらぬ。言っておくが、自らの罪は他の誰も負ってはくれぬぞ」  シーザーはそれ以来何も言わなくなった。そして、シウスもこれ以上は付き合うつもりもなかった。 「連れてゆけ」  伝え、そのまま連れられてゆくシーザーの背中を見る。そして、ファウストに声をかけた。 「後は私で十分じゃ。お前はランバートにフォローでも入れてこい。良いか、フォローだぞ」 「…任せた」  それだけを伝え、ファウストは宿舎へと戻っていく。 「大丈夫でしょうか?」 「ん?」  隣に並んだラウルが、心配そうにファウストの背を見ている。その瞳には、この場にいないランバートも見ているようだ。 「後はなるようにしかならぬ。だが、おそらく双方捨てられぬ。もう、離れる事などできぬよ」  心が真に求める番を引き離せば、心が裂けてしまう。その痛みを、既に二人は知っている。ならばきっと、互いに捨てられはしない。後は互いの心を曝け出し、互いに学ぶ事だ。  遠ざかる背を見つめながら、シウスは重く溜息をついた。
/149ページ

最初のコメントを投稿しよう!