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舞っている切端たちが別れを言っているように見えたのも、やっぱり気のせいだったのだろうか、星が煌めくように宙を舞っていた切端たちは、しばらくしてどんどん遠くの方へ飛んでいってしまい、そして、跡形もなくなりもう見えなくなってしまった。
バスはそんな漆黒の闇の中を、ひたすら走っていく。
夜空には、今まで見たこともないほどの星々が煌めき、流れ星すら見えたが、あまりにも闇が濃いので、なんだか夜空に覗きこまれてスッポリと包まれてしまうような気分になった。
やがて、バス内の前方にあるランプが点滅し始めた。
終点の文字が赤く点滅していた。
もうすぐ着くのか、
と思いながら、疲れきった身体を後ろのシートの背もたれに倒しながら、どっしりとシートに身体を預けた。
車内はすでに真っ暗で、何も見えなかったが、バスは真っ直ぐ終着駅に向かって走り続けていた。
ちょうど終着駅に到着するころ、ちょっとだけ車内は明るくなったが、これはもうすぐこのバスを降りるために点けられた灯りのせいだったのかもしれない。
私の前に座っていた老婆が、とても穏やかな表情で私を振り返って見たが、ただ黙って、とてもいい表情でまた前を向いた。
斜め横にいた幼稚園のスモッグを着ている少年も、安らかな表情で吐息を漏らしていた。
しばらくしてバスは終着駅に到着した。
乗客たちは、さらに闇が濃くなった一面真っ黒の夜の海へ、席を立ち、バスから、ただ黙ってゆっくりと降りていこうとしていた。
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