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その降りていく時の、人々の表情の安らぎと諦念、疲れと吐息を漏らしながらも、あまりに穏やかな表情を見ていて、すべてが理解出来た。
ああ、すでに到着してしまったのだな、と。
人間が最期には必ず辿り着くことになる、あの漆黒の闇の終着駅に…。
バスを降りていく死者達の安らいだ表情と、ゆっくりとしたその足取りは、私の表情や足取りそのものだった……。
私も、とても安らいだ、穏やかな気持ちで、バスを降りた・・・・・。
昔、小さな人生があった。
どこにでもある小さな人生。
そこに登場した人々も時間ももう消えてしまった。
そこにあった素敵な場所もとっくになくなってしまった。
そんな思い出を語り合う仲間ももうどこにもいない。
そして小さな人生も、生暖かい風に吹かれて宙を舞い、そして消えていった……。
ちょうどあの宙を舞いながら、跡形もなく消えていった日記の切端のように……
(終)
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