桜の木の下で。

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「え、あの、君……」 「見せて」  僕の言葉を遮り、彼女はモニターを覗き込んだ。  近すぎる距離に慌てて身をひくと、彼女のむき出しの肩が見えた。    白いワンピースと同化しているんじゃないかってくらいに白い。  あと、この季節にノースリーブのワンピースはちょっと寒いと思う。似合ってるけど。 「君の目には、私がこう映っているのね?」 「え……?」 「嬉しい。すごく、綺麗に撮れてる」  彼女はやわらかそうな髪を揺らしながら嬉しそうに笑う。   「私も、撮ってみたい。いい?」 「いい、けど」  遠慮がちに伸ばされた指先が、そっと僕の手に触れる。  ほんのわずか触れた箇所にぴりりと静電気のようなものが走った。  小さく肩を揺らせば、彼女もそれを感じたのか申し訳さなそうに笑っている。 「ごめんね」 「だい、だいじょうぶ」 「これ……どうしたらいいの?」  落とさないようにと僕の真似をしてカメラを構えている彼女は、外見に見合わない蟹股になっていた。  おもわず吹き出してしまい、彼女はほんのり赤く染まった頬を膨らませて俯いてしまった。  慌てて誤魔化すように咳ばらいをしたけれど、時すでに遅し。  彼女は口を尖らせている。 「あのね、これ、首にかけたら大丈夫だから」 「……わかった」  露出の多い肌に触れないよう慎重にストラップを首に回す。  だけど、ほんのちょっと。ほんのちょっとだけ首筋に手が触れてしまった。下心はない。絶対に。  ていうか下心とかそういうのより、彼女の身体の冷たさにびっくりした。 「ちょちょ、そんな恰好してるから冷え切ってるじゃん」 「え?」 「え、じゃないよ。俺のジャケットで良かったら着ててよ」  そっと肩にジャケットをかけてやると、くすぐったそうに身をよじって笑っている。 「く、臭くはないと思うけど!?」 「ううん。あたたかい。嬉しい」  ……可愛い。  先に言っておくが、僕は軟派な男ではない。 .
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