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でも……彼女と出会って、五日目。
変化は、突然訪れた。
「どうし、たの」
「……おはよう」
いつものように僕を出迎えてくれた彼女は、いつものように綺麗なほほ笑みを浮かべていた。
ただひとつだけ、いつもと違う姿をして。
はらはらと散り始めた桜の花びらが、彼女の透けた身体ごしに見える。
「……幽霊、だったの?」
僕の問い掛けに、彼女は首を振る。
桜をまとったような姿が、頭がくらくらしてしまいそうなくらい綺麗だった。
こんなにも綺麗で人間味のある幽霊が、いてたまるか。
冷たかった彼女の身体は、今では熱いくらいだ。
僕の抱擁を受け入れる彼女はその細い腕を背中に回して小さく息を吐いた。
「写真を、撮ろうよ」と。消え入りそうなか細い声で言って。
「……そろそろ100点、くれる?」
「君の腕次第だね」
笑う彼女の瞳は、詳しいことは聞いてくれるなと言っているようで。
僕は、それに従いカメラを構えた。
彼女が何であってもいい。傍に、いられるのなら。
桜吹雪の中でほほ笑む彼女は、今まで見た何よりも綺麗だった。
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