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彼女と過ごして、今日で一週間。
五日目で透けた身体を見せた彼女は、昨日はいつも通りだった。
いつもと変わらない姿で写真を撮って、撮られて過ごした。
たった数日で、カメラのデータは彼女と撮った桜だらけだ。
相変わらず辛口の点数しかもらえないけど、それでも少しずつ点数は伸びている。
今日こそ、今日こそ100点をもらいたい。
気に入ったデータをいくつかプリントしていたせいで、いつもより少し遅れて桜の元へ向かっていると唸るような機械音が響いた。
「なん、で」
全速力で走っていたから、呼吸が整わない。
汗も、止まらないし。鼓動も、耳鳴りがするほどひどい。
でも、言葉を失ってしまったのは、そのせいじゃない。
「あーだめだめ、危ないから入らないで」
心地よい静けさのあるこの場所が大好きだった。
まるで、世界には僕と彼女しか存在しないんじゃないかって錯覚してしまうほど。
だけど……今日は違う。
僕の前に立ちふさがった男の人と同じように、作業服とヘルメットをまとった人がたくさんいる。
ごうごうと音を立てて土を掘り返す重機の音が腹に響いて胸が苦しい。
僕が大好きだった桜の木は、今にも切り倒されようとしていた。
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