(〇二)

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「ええ…」  霧島は自分のスマホを取り出して操作すると、フルセグチューナーで籠城を中継している番組を映し、 「これです」  と、三人で見えるようにした。  カメラ映像は遠目で撮影しているのと、ブラインドが降ろされているため、店内の様子は殆ど見えない。  時々、ブラインドとブラインドの隙間部分をカメラがズームで捉えるが、やはり、ハッキリ見えないようである。  それでも、数秒間、犯人らしき人影が見えた。  首から上の部分だけだが、黒い帽子に白のマスクをした人物が、時々、首を左に動かすしぐさが映し出されたのだ。 「ああ、間違いなく安達ですね」  と、柳川が言う。 「顔がハッキリしないのに、ようわかりますね?」  と、村瀬が尋ねる。 「さっき見えた首を左に動かすしぐさですわ。あれ、安達の癖ですねん」 「なるほどねえ」  と、村瀬が納得する。 「ところで柳川さん」  と、霧島が声をかけ、 「事件の後、池上誠子さんとはどうなりましたか?」  そう質問した。 「どうと言われましても…」 「お付き合いされているとか、会ってもいないとか…」 「あの後、私も彼女も、すぐに会社を辞めてしもたんで、それっきりですね」 「辞めた? どうしてですか?」 「あんな恥ずかしいゴタゴタがあったんじゃ、会社に居づらいですよ」 「三角関係ってことですか?」  と、村瀬がズバリと聞く。 「まあね」  柳川が面白く無さそうに答える。 「ほな、あなたも今は五年前とは違う会社に?」 「そうですよ」 「それから、池上さんの現在の所在に関しても、まるっきりわからないってことですな?」 「そうですね」  続いて霧島が、 「その三角関係に関してですが…」  と、口を開いた時、 「あの、すいませんけど、そろそろ急がないといけないんですけど…」  と、柳川が遮った。  霧島が柳川の表情を観察するが、これといった変化はない。
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