#18 花澄

14/14
1143人が本棚に入れています
本棚に追加
/338ページ
キッチン片付けをしながら、涼介のお父さんのことや、涼介のことを考える。 お兄さんの連絡先を知らないと言っていたから、たぶん涼介はお兄さんには連絡しないだろう。 去り際に、お父さんが、「いつでも帰ってきなさいと言いたいところだけど・・・・もう、帰ってくるつもりはないよな?」と、寂しげに言っていた。 よそ様のお家のことは、とやかく言えない。でも・・・・ 隣の部屋で作業をする涼介の背中が見える。 怒っているような、寂しそうな。 私は、その背中を目指して、駆け寄って、思いっきり飛びついた。 「うわっ!!」 涼介が驚いて前のめりになる。 「何やってんだよ、危ないだろ?」 「ね!!夜ごはん、駅の近くのラーメン食べに行かない?」 と、叱られたのにも構わず、私は夕食の提案をする。 「いいね」 「やったー!!涼介、大好き!!」 大げさに涼介の頬にキスして、キッチンに急いで戻る。 暗くなる前に終わらせないと!! 片付けを終えた涼介が、ごみの束を持って、キッチンに入ってくる。その顔は、いつもの涼介に戻っていて、私はホッとした。 私と目が合うと、びっくりするほど優しい顔で笑って、一緒にキッチンを片付けてくれた。 いいんじゃないかな、これで。 こんな感じで、私たちは。 だから、笑って欲しい。 お願いだから。 そのためなら、私はいくらでもバカになれる。
/338ページ

最初のコメントを投稿しよう!