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キッチン片付けをしながら、涼介のお父さんのことや、涼介のことを考える。
お兄さんの連絡先を知らないと言っていたから、たぶん涼介はお兄さんには連絡しないだろう。
去り際に、お父さんが、「いつでも帰ってきなさいと言いたいところだけど・・・・もう、帰ってくるつもりはないよな?」と、寂しげに言っていた。
よそ様のお家のことは、とやかく言えない。でも・・・・
隣の部屋で作業をする涼介の背中が見える。
怒っているような、寂しそうな。
私は、その背中を目指して、駆け寄って、思いっきり飛びついた。
「うわっ!!」
涼介が驚いて前のめりになる。
「何やってんだよ、危ないだろ?」
「ね!!夜ごはん、駅の近くのラーメン食べに行かない?」
と、叱られたのにも構わず、私は夕食の提案をする。
「いいね」
「やったー!!涼介、大好き!!」
大げさに涼介の頬にキスして、キッチンに急いで戻る。
暗くなる前に終わらせないと!!
片付けを終えた涼介が、ごみの束を持って、キッチンに入ってくる。その顔は、いつもの涼介に戻っていて、私はホッとした。
私と目が合うと、びっくりするほど優しい顔で笑って、一緒にキッチンを片付けてくれた。
いいんじゃないかな、これで。
こんな感じで、私たちは。
だから、笑って欲しい。
お願いだから。
そのためなら、私はいくらでもバカになれる。
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