#1 涼介

2/30
1148人が本棚に入れています
本棚に追加
/338ページ
・・・・・・・・・・・・・・ 真っ暗な夜空から、粉のような雪が降ってくる。 温かい地方に降る雪は、服につくと雨に降られたかのようにしっとりと重みを持って、体温を奪っていく。 月の明かりをさがすけど、どこにも月がない。 月の明かりさえあれば、少しは寂しさがまぎれると思ったのに。 昼間の出来事が、重く心にのしかかって、泣きたくなる。 今なら闇に紛れて泣くことも出来るのに、涙は一滴も出ない。 泣けもしない。 怒れもしない。 嘆くことも出来ない。 救いようのない現実に追い打ちをかけるように、この雪だ。 おまけに月も出ていない。 早く、消えてしまえればいいのに。 ・・・・・・・・・・・・・・
/338ページ

最初のコメントを投稿しよう!