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「匂い嗅いでるの?」
と、花澄が言う。
「いや?違うけど」
「やめてよ。恥ずかしいじゃん」
「だから、嗅いでないって」
花澄の首に頬を押し付けて、俺は言った。
押し倒せないなら、匂いくらい好きなだけ嗅がせろよ。
俺は花澄に何を求めているんだろう?
セックスも出来ないのに、部屋に居続けて。
こんな優男みたいな真似までして。
分かっているのに、抱きしめるのを辞められない。手の中の温もりを手放したくない。
外見が好みなだけで、執着しすぎだろ。
そもそも花澄よりいい女なんてたくさん・・・・・
花澄の体温と俺の体温が服を通り越してまじりあったとき、花澄の頭がカクンと落ちた。
「眠ったのかよ」
より一層、力を込めて抱きしめた。
彼女が目を覚まさないように加減して。
身体の芯が無くなった彼女の身体はますます柔らかさを増して、俺の身体の芯を刺激した。
(このまま時が止まればいいのに)
そうだった。本来の目的を思い出した。
忘れてはいけない。
俺が花澄に近づいたのは、暇つぶしのため。
弱らせて自分が楽しむため。
花澄を抱えてベッドに寝かせてた。
顔を見ないように、布団をかけて、振り返りもせず、彼女の部屋を後にして、自分の部屋へ帰ることにした。
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