#3 涼介

19/19
1145人が本棚に入れています
本棚に追加
/338ページ
「匂い嗅いでるの?」 と、花澄が言う。 「いや?違うけど」 「やめてよ。恥ずかしいじゃん」 「だから、嗅いでないって」 花澄の首に頬を押し付けて、俺は言った。 押し倒せないなら、匂いくらい好きなだけ嗅がせろよ。 俺は花澄に何を求めているんだろう? セックスも出来ないのに、部屋に居続けて。 こんな優男みたいな真似までして。 分かっているのに、抱きしめるのを辞められない。手の中の温もりを手放したくない。 外見が好みなだけで、執着しすぎだろ。 そもそも花澄よりいい女なんてたくさん・・・・・ 花澄の体温と俺の体温が服を通り越してまじりあったとき、花澄の頭がカクンと落ちた。 「眠ったのかよ」 より一層、力を込めて抱きしめた。 彼女が目を覚まさないように加減して。 身体の芯が無くなった彼女の身体はますます柔らかさを増して、俺の身体の芯を刺激した。 (このまま時が止まればいいのに) そうだった。本来の目的を思い出した。 忘れてはいけない。 俺が花澄に近づいたのは、暇つぶしのため。 弱らせて自分が楽しむため。 花澄を抱えてベッドに寝かせてた。 顔を見ないように、布団をかけて、振り返りもせず、彼女の部屋を後にして、自分の部屋へ帰ることにした。
/338ページ

最初のコメントを投稿しよう!