変わりゆくもの

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   ――人は変わる。  環境も。世界も。全てのものは刻々と変わっていく。  でも、古いものは淘汰されるんじゃない。  たとえ形を失うことになっても、何処かに必ず残っているのだ。残り続けるのだ。  あの日、やはり私はお父さんの元から離れなくてよかったと思う。  最期までお父さんの笑顔に寄り添うことができた。それはお父さんのためでもあったが、自分のためでもあった。私のために頑張ってくれたお父さんに、最期の最期まで感謝の気持ちを伝えたかった。  私も子を持ち、親となった。あらゆることに忙殺され、お父さんのことを思い出す日が少なくなっていく。  たしかに、人や環境は変化していく。でもお父さんのことも、思い出の桜も、過去のものとして捨てていくわけじゃない。  私の中に、ずっと残っている。  お父さんの笑顔も、あの桜吹雪も、私を暖かく見守っていてくれる。だから私は変わることを恐れず、前に進んでいくことができるのだと思う。  あの日々のことを、私は今でも忘れない。  そして、これからも。  私は春華の手を強く握ると、良樹の来る駅へと足早に進んでいった。  
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