姉との諍い

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姉との諍い

 専業主婦を謳歌している姉のつんと尖がった鼻を眺めながら、速人(はやと)はオニオンフレーバー付きのマカダミアナッツを一粒口の中に入れ噛み砕いた。ダイニングテーブルの上には、姉からの、ミカン箱ひとつ分のハワイ土産がずらりと並んでいる。その中にあった小振りな缶を開け、速人は手持無沙汰を解消すべくナッツに手を出したのだが、これが案外癖になる美味しさで、缶の中身はもう半分以上無くなっている。 「で、いつまでここにいるわけ?」 「一ヵ月くらいかなあ。旦那ものんびりしてこいって言ってくれたし」 「その間に浮気しまくってたりしてな」  口調に棘があるのは自分でも分かっている。話に水を差すたび姉から笑顔が消える様は、速人に昏い喜びをもたらした。気を取り直すかのように姉がパイナップルワインの栓を開け、一口飲んでから瓶のまま速人に勧めてくる。 「いらない。このあと泳ぐんだ」  本当に泳ぐ予定はあったが、断る理由は違った。間接キスをしたくない。この女とは。 「いつから泳いでるの? 私が日本にいた頃はやってなかったよね」     
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