奈々

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奈々

 行きつけの中華料理屋は相変わらず空いていた。夜の七時だというのに、先客は一組の地味なカップルと、ひとりでラーメンを啜っている中年の男だけだ。  二人掛けの席に速人とカイトが座ると、店員の奈々がさっと寄ってきて、水の入ったコップをテーブルに置いてくれる。奈々とは傘の一件で、急速に仲良くなった。速人は店に赴き、カイトから押し付けられた傘を彼女に返したのだ。その際、お詫びの印にケーキ屋で買ったクッキーを渡したのだが、予想以上に奈々は喜んでくれた。 「いつもので良いですか。レバニラ定食と、天津丼の大盛りで」 「ああ、それでお願い。覚えてくれてるんだ。凄いね」  カイトが奈々を褒めた。週に二回は、プールで泳いだ後にこの店で夕飯を食べている。水泳でエネルギーを消費した体は、高カロリーな食べ物を欲するのだ。 「かしこまりました。速人さんって、スリムなのに凄い食べますよね」  笑顔の奈々がテーブルから離れ、厨房に向かって小走りで駆けていく。その後ろ姿は、いかにも女の子だ。今日は上がピンクのポロシャツで、下がジーンズのタイトスカートだ。膝上から踝まで肌が露出しているから、ついそこに目が行ってしまう。     
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