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「奈々ちゃんてカイトに気があるかもな」
小声でカイトに話しかける。カイトとここに来るようになってから、目に見えて奈々の格好が変わった。服装はもちろん、以前は化粧っ気がなかったのに、今日はマスカラまできっちり施していた。ノーメイクでも十分可愛いと思っていたが、化粧をすると華やかな雰囲気になる。
「お前も気があるんだろ? よく話しかけてるじゃん。可愛いね、とか」
水を一気に飲み干したカイトが、空になったグラスのコップをテーブルに置いた。
「べつに何とも思ってない。暇そうにしてるから話しかけてるだけだ」
「え、そうなの? その気がないんだったら、必要以上に声を掛けるなよ。誤解される」
「速人が付き合えば? 可愛いと思ってるんだろ。奈々ちゃんのこと」
たしかに彼女は可愛い。速人とカイトが話しかけると、花が開いたような笑顔になる。一歳年下の素直な女の子。男に抱かれている身の自分でも、彼女を見ていると庇護欲が芽生える。
「顔、ニヤついてる。デートの妄想でもしてるのか?」
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