紘一

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 速人は体を揺すって紘一の前戯を拒否した。紘一がバイトから帰ってきたということは、もう夜中の二時を過ぎているということだ。今からセックスをしたら、朝方まで寝られないかもしれない。冗談じゃない。 「すぐに終わらせるから。それに……こっちは満更でもなさそうだ」  いつの間にか、速人のパジャマの中に、紘一の大きな手がもぐりこんでいる。パンツ越しに、受け入れ慣れている部位を指先で擦られ、速人は小さい声を漏らした。そこは嫌になるほど敏感だった。びくりと腰が震えるのを止められない。額に汗がにじむ。 「面接があるんだって、明日……もう今日だけど」  自分の声が弱弱しくなっていることに気が付き、速人は思わず舌打ちをした。いつもそうだ。強く拒否できない。その先に度を越えた快感があることを知っている。紘一の温かい手が足が、速人の体に絡む心地よさを覚えている。  ベッド脇の間接照明だけが、紘一の顔を映し出している。少し吊り気味の一見怖い印象を与える目が、速人は好きだった。自分を見るときは優しく緩むから嬉しくなる。速人限定の目つきなのかは分からないが。     
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