紘一

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 会話が途切れる。速人は紘一に体を仰向けにされ、ふたりは正常位の体勢になった。紘一の指が体内に少しずつ入ってくる。中にオイルを抽入され、痛覚は簡単に麻痺し、次の刺激を望む内壁は、慎ましく収縮した。紘一の指が二本、三本とスムーズに増えていき、出し入れが何度となく繰り返され、乾き始めたと同時にオイルが追加される。ぐちゅ、ぐちゅ、と耳を塞ぎたくなるほど、恥ずかしい水音が部屋中に響く。 「ほら、キス」  思い出したように紘一がキスをせがんでくる。速人は観念し、口を開き、下りてくる紘一の舌にそれを絡めた。唾液を嚥下できないほど深く、お互いの口内を探り合う。それがいつも行う挿入前の通過儀礼だった。いつもキスの合間に、紘一はさり気なくコンドームを装着する。手慣れていて、ムードを壊すことも一切ない。  オイルでぐっしょりと濡れた、呼吸を繰り返す蕾に、紘一の勃起したものが押し当てられる。来る、来る、来る。心の中で呟く。一抹の不安と、それに勝る圧倒的な期待で、速人の胸は小刻みに震えた。無意識に速人が紘一の肩に爪を立てると、それを合図にしたかのように、ぐぐっと硬く熱い肉が、内側へと押し入ってきた。 「ん、ん、ん……」     
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