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ハース「奴の体が持つまでの間だがな。あれだけの加速ができる魔法だ,義体への負
荷は相当だろう」
ハース,メインモニタを見ながら答える。傍らのC.I.DB,ハースを見て,再びメ
インモニタを見る。
C.I.DB「どうやら,その必要もないようじゃがの」
メインモニタでは,会場のあちこちで粉塵が上がっている。
○ライブ会場・客席中央
粉塵の中,サイレンが瞬間移動でやって来る。サイレン,肩で息をしながら
サイレン「あ,あいつは」
サイレンの後ろから,ローチの右手が煙を突き破って現れる。振り向くサイレン,
その顔をローチの右手が捕える。サイレン,両手でローチの手に掴みかかる。煙の
中からローチが現れ,力任せにサイレンの頭を地面に叩き付ける。地割れが起き
る。
ローチ,サイレンに馬乗りになっている。熱気でローチの周りの景色がぼやけてい
る。
ローチ「我が社の強制執行員を殺害したヒューマノイドはどこだ」
ローチの視界,”魔法被曝:危険領域”,”自動追尾解除”,”冷却度:危険領域”の表
示。
ローチに掴まれたサイレンの顔から煙が上がる。肉が焦げる音がしている。ローチ「おまえが我が社に与えた被害は計り知れない。だが,返答によっては処罰の軽減
も考えてやる。匿うだけムダだ」
○CoCiD社・強制執行部発令室
メインモニタにローチの視界が表示されている。サイレンを押さえつけたまま動い
ていない様子。
量子「なにか喋ってる?」
ヤマキ「今は冷却のために少しでも時間が欲しいんだろう」
ハース,じっとメインモニタを見つめる。C.I.Dの二人は用意された椅子に座って
メインモニタを見ている。
○ライブ会場・客席中央
顔を掴まれたままのサイレン,くぐもった声で答える。
サイレン「あなたこそ,ずいぶんお喋りになったわね,これだけ戦って気付かなかった?」
ローチ,答えない。突然,激しい炸裂音とともに,ローチの右上腕が消える。反動
で後ろによろけるローチ。サイレン,ローチの下から正面に瞬間移動し,渾身の中
段突きをローチの顔面に放つ。ステージへ吹き飛ぶローチ。
サイレン,ステージに正対し,顔に張り付いたローチの前腕を剥ぎ取る。
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