第一話:Siren & the Spooky Kids

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○同・ステージ前    ローチの視界では,”血液減少”,”冷却不全”,”冷却度:危機領域”と表示され,所    々にノイズが走っている。    ローチ,うつ伏せの状態から立ち上がろうとするが,その場に再び倒れ込む。右肩    からは蒸気と共に熱された血が吹きだし,全身から蒸気が出ている。    ローチの手前に,火花を散らす仮面が落ちているが,踏み潰されて爆発する。    瞬間移動してきたサイレンである。サイレン,息切れぎれに, サイレン「これで,終わりよ」    サイレン,意識をローチの頭に集中する。    ローチの視界では,”魔法被曝感知:頭部”,”電脳錠解除”,”非推奨”と新たに表示    される。 ローチ「もってくれよ」    ローチ,小さくつぶやくと,キッとサイレンを見る。その目は黒目と白目が入れ変    わっている。    サイレンとローチの目があう。途端に,サイレンの視界を大量のイメージが覆う。 ○イメージ    金切り声のような音が大音量で響く。    仲間達の輪に入れないサイレン。 サイレンの声「ひとり」     *  *    自分の部屋で踊っているサイレン。 サイレンの声「たったひとりでいいから」 ローチの声「ざひょう」    徐々にローチの声も混ざってくる     *  *    柔らかな笑みを浮かべる男性。 サイレンの声「わたしのおもい」 ローチの声「らんだむ」     *  *    ローチの仮面を付けた顔。 サイレン,ローチの声(同時に)「とどけ」 ○ライブ会場・ステージ前    サイレン,白目を剥いている。手足をバタバタと動かすサイレンの体,全身から    蒸気が出ている。義体が軋む音。    サイレンの唇がビクビクと震えだす。大声で, サイレン「Break!」    右手を残して頭と左手,両足が凄まじい炸裂音とともに消失する。残った胴体が    ボトリと落ちる。少し間を開けて,空からサイレンの頭が客席中央に降ってくる。 ○CoCiD社・強制執行部発令室    けたましく警報が鳴り響いている。社員の走り回る音。    量子のデスクのそばで,ヤマキが方々に指示を出す。 ヤマキ「予備の義体の投下準備を急げ!電脳錠のパスをヴァンガード・ゼロのものにし  ろ!」    量子,ヘッドセット越しに結界士に指示を出している。必死の形相。 量子「ファイアウォールを局地型に変えて!急いで!」
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