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○同・ステージ前
ローチの視界では,”血液減少”,”冷却不全”,”冷却度:危機領域”と表示され,所
々にノイズが走っている。
ローチ,うつ伏せの状態から立ち上がろうとするが,その場に再び倒れ込む。右肩
からは蒸気と共に熱された血が吹きだし,全身から蒸気が出ている。
ローチの手前に,火花を散らす仮面が落ちているが,踏み潰されて爆発する。
瞬間移動してきたサイレンである。サイレン,息切れぎれに,
サイレン「これで,終わりよ」
サイレン,意識をローチの頭に集中する。
ローチの視界では,”魔法被曝感知:頭部”,”電脳錠解除”,”非推奨”と新たに表示
される。
ローチ「もってくれよ」
ローチ,小さくつぶやくと,キッとサイレンを見る。その目は黒目と白目が入れ変
わっている。
サイレンとローチの目があう。途端に,サイレンの視界を大量のイメージが覆う。
○イメージ
金切り声のような音が大音量で響く。
仲間達の輪に入れないサイレン。
サイレンの声「ひとり」
* *
自分の部屋で踊っているサイレン。
サイレンの声「たったひとりでいいから」
ローチの声「ざひょう」
徐々にローチの声も混ざってくる
* *
柔らかな笑みを浮かべる男性。
サイレンの声「わたしのおもい」
ローチの声「らんだむ」
* *
ローチの仮面を付けた顔。
サイレン,ローチの声(同時に)「とどけ」
○ライブ会場・ステージ前
サイレン,白目を剥いている。手足をバタバタと動かすサイレンの体,全身から
蒸気が出ている。義体が軋む音。
サイレンの唇がビクビクと震えだす。大声で,
サイレン「Break!」
右手を残して頭と左手,両足が凄まじい炸裂音とともに消失する。残った胴体が
ボトリと落ちる。少し間を開けて,空からサイレンの頭が客席中央に降ってくる。
○CoCiD社・強制執行部発令室
けたましく警報が鳴り響いている。社員の走り回る音。
量子のデスクのそばで,ヤマキが方々に指示を出す。
ヤマキ「予備の義体の投下準備を急げ!電脳錠のパスをヴァンガード・ゼロのものにし
ろ!」
量子,ヘッドセット越しに結界士に指示を出している。必死の形相。
量子「ファイアウォールを局地型に変えて!急いで!」
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