第一話:Siren & the Spooky Kids

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第一話:Siren & the Spooky Kids

○地球(夜)    地球からアジアのアップ。さらに焦点が日本へ。    都市部が眩く輝いている。そこから放射状に広がる明かり一つ一つが別の都市部    につながっている。 量子の声「500年前,私達を生んだ神様は,この星から消えた。」 ○都会・外観(夜)    まばらに明かりがついたビル群。その間を縫うように,街灯や車,ネオンの光が煌    めく。 量子の声「この世界を離れるなら,どうして神様はワザワザ私達を作ったんだろう。最初  に生まれた人たちは,神様とそんな話をしたのかな。恐れ多いけど,私なら気になって  話しかけちゃうな」 ○同・大通り    仕事終わりのヒューマノイド達が行き交う。    飲み屋に入って行く者たち。    大声で笑い合う者たち。    誰かと待ち合わせしている女性,手首に表示された時間を確認する。 量子の声「神様って,どんな感じなんだろう。私達みたいに誰かを好きになったりする  のかな。お仕事の途中で眠くなったりするのかな」    女性,やってきた男性と笑顔で話し,腕を組んで歩き出す。裏通りへ向かう。 ○同・裏通り    先程のカップル,廃れたラブホテルに入っていく。向かいのラーメン屋には行列    ができている。    行列の客達,道端で汚い毛布にくるまって寝込んでいる者がいるが,誰も気に留    めない。    店内から食事が終わった者が二人出てくる。行列の先頭の二人がのれんをくぐり,    店内に入る。 ○ラーメン屋・店内    厨房を囲うようにして席が並ぶ窮屈な店内。先程の二人が狭そうに空席に向かう。    途中,席に座るスーツの男の後ろを通るとき,つい珍しそうに見てしまう。    男,カウンターで手を組んで注文を待つ。ローチ(35)である。 店主「お待ちどおさま」    ローチが手をどけると,店主がラーメンをカウンターに置く。チャーシューが2枚    のった味噌ラーメンである。    ローチの顔を覆う白い仮面の口元だけが左右にスライドし,ローチの口と頬が顕    わになる。顔の前で手をあわせる。 ローチ「いただきます」    と,一言一言はっきりと言う。物珍しそうに見ていた左隣りの客が,再びス    プーンとフォークを動かし始める。       ローチ,割り箸を割って食べ始める。 量子の声「そんなことを考える日が今日で終わりだなんて,思ってもいなかった」
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