第一話:Siren & the Spooky Kids

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○ライブ会場・ステージ       ステージ上にはサイレンと6人のダンサーがいる。Siren & the Spooky Kidsのそ    ろい踏みだ。    サイレン,手にしたマイクで話始める サイレン「次で最後です」    歓声が悲鳴や嗚咽混じりになる。 サイレン「今日,このライブは,私にとって特別なライブです」    歓声が少し弱まる。サイレン,汗だくの顔をぬぐって, サイレン「10年前の今日,私は生まれました。私はなんの取り柄もない地味な子だっ  た。周りの人は頭が良かったり,おしゃべりが上手だったり・・・でも,歌を歌う  のは大好きだった。誰も見てくれない路上ライブ,観客がいないライブハウスのラ  イブ,それでも,私は歌い続けた。いつか,救われる日が来ると信じて」 ○CoCiD社・強制執行部発令室    サイレンのMCに聞き入るハース達。 C.I.DA「この人ホントに違反ヒューマノイドなの?頑張り屋さんのお姉さんにしか見え  ないけど」    我に返ったようハース,C.I.DAを見てぴしゃりと言う。 ハース「術中にはまりよって。これが奴の”ワザ”さ」 ヤマキ「ヴァンガード・ワンを追跡します」    ヤマキ,量子を見る。量子ははっとしてキ ーボートをたたく。その手をC.I.DB    が止める。 C.I.DB「まあまあ,あちらさんの言い分もきいてみようや」    C.I.DB,にっこりほほ笑む。量子,困った表情でメインモニタを見る。 ○ライブ会場・ステージ サイレン「生活が苦しくなって,企業から違反扱いになって,人生のどん底でした。そ  のとき,私はわかったのです。歌は,誰かの心に届いてこそ意味があるんだと。私は  もう一度自分に向き直りました。一人,たった一人でいいから,その人の心に私の思  いが届くようにと。初めは全然ダメだったけど,でも少しずつ,思いが届いた人が増  えていって,今ではこんなにたくさんの人に,私の思いが届いています!」    10万人の地鳴りのような歓声がサイレンの言葉に答える。 サイレン「今日ここに来てくれた人たちの心に,いつまでも私の思いが届くように,次  に行く前に一つだけ,私のワガママを聞いてください」    舞台袖からおぼつかない足取り一人の女性が歩いてくる。エスぺランザ(20)    だ。 ○CoCiD社・強制執行部発令室 ハース「エスぺランザ!」    ハース,身を乗り出してメインモニタに叫ぶ。
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