第二章 スワッピング ―禁断の扉―

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 *  はあ、本当に来ちゃった……。  都内の住宅街にある低層マンションを志保は見上げた。土曜の夜、閑静な住宅街に人通りは少ない。隣では、夫の浩介がスマホに目を落とし、地図を確認していた。 「ここで合ってると思う」  申し込み後、主催者から送られてきたメールには、都内の駅名が記されていた。駅に着いたら指定された番号に電話をかけさせられた。すると、このマンションを教えられた。  なんで、こんな用心深いんだろう……麻薬の売買にでも行くみたいじゃない。いやだなあ……。  後ろめたさを感じる。今ならまだ引き返せる――そんな声がする。だが、浩介はさっさと玄関ホールに入り、部屋番号を押した。  はい、と女性の声がした。 「あの、すいません……山田です」  浩介が緊張した声で答えた。参加者は「山田」と名乗る決まりになっていた。
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