あらすじ

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 ユウカには優しい先輩が側にいたし、笹生にはもう一人の幼馴染や実は女性だった皇がいた。  さらに笹生の前にはやがてユウカの双子の妹だというユウカそっくりの少女が現れる。彼女は姉からよく二人の話を聞かされており、笹生にはユウカと妹の違いが分からなくなっていた。  笹生の心は揺れ動くが、最終的にユウカを選ぶ。  会話ができなくとも、彼には彼女が掛け替えのない存在だった。  それはユウカも同じで、その想いをビデオレターにて確認し合ったふたりは数年後、結婚する。  時は過ぎ、やがてふたりは三十歳になる。  結婚してから五年、例の事件から十三年の時が過ぎていた。  三十になった笹生はユウカの妹と浮気していた。「こんなことしていいの?」とベッドの上でいたずらっぽく聞く妹に「ユウカとじゃ出来ないからな」と大人になり、諦念を顔に張り付けた笹生は言う。  罪悪感がないわけではないがこれはしょうがないことなんだと自らに言い聞かせる笹生。  ユウカも同じようなことをしているかも知れないとふと思うが、それならそれでしょうがないと、皮肉気な笑みを浮かべる。 「……大人になるってのはこういうことなんだろうな」  成長した笹生は、どこか寂しげにそう呟くのだった。
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