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その『岩』は『絶望の音』だった。
『岩』を中心に『絶望の音』の波紋が広がっていった。
悲鳴、悲鳴、悲鳴。
卒業生の一人が、屋上から身を投げたのだった。
後々、話を聞くと、校庭にいた卒業生の内の一人の女生徒が、屋上から何かを叫ぶ彼の姿を見ていたらしい。
そのときの彼女は、校庭の『希望の音』の中に居り彼が何を叫んでいるのか聞こえなかったし、ただテンションが上がって屋上に登っただけだろうと思っていて、気に留めなかったらしい。
彼の『絶望の声』は『希望の音』に掻き消され、ついに届くことはなかった。
ただ彼の死と伴に発された『絶望の音』が虚しく響くだけだった。
彼は遺書を残していなく、自殺の原因は結局分からなかったそうだ。
その後僕は『絶望の音』を耳に残し今まで生きてきた。
あの音は僕をずっと責め続けてきた。
高校時代、彼を虐めていたこの僕を。
彼が自殺したのが卒業式であるから、いじめが原因だとは普通考えられないが、原因不明である以上僕が原因なのかもしれないのだ。
誰に届くこともなかった彼の『絶望の声』は、僕への恨み言だったかも知れない。
僕は5年間苦しんできた。自業自得と思われるかも知れないが、苦しんだのだ。もう十分に。
それも今日で終わる。
僕の人生はあの音と伴に終わるのだ。
そして僕は校舎から身を投げた。
ぐしゃん。
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