逃げた兎

1/7
前へ
/69ページ
次へ

逃げた兎

②の悩み 昨日、パンダウサギのモンが居なくなってしまった。今朝もう一度数えてみたが、やはり1匹足りない。食いしん坊が好物の草を食べ歩いているだけなら良いが、庭には様々なトラップが幾重にも仕掛けてある。万が一そのどれかが作動しないとも限らない。探しに行くにも、スイッチを切らねば私とて危うい。どうしたものか…やはりここは、シロさんに相談せねばなるまい。そして殖えたウサギたちの行先も、合わせて検討して頂こう。 6月18日  業務日誌  乳母①通常  我々は皓月様・芳樹様の視界の外にいるように心がけている。しかし 閃とはそうもいかない。「女」の身分で「芳樹様の嫁」の立場を手に入れたらしい。彼の存在する世界に普通はない。 通常や一般的などという常識が陳腐に思える異世界の住人。彼はいつまで演じ続けるのか・・・楽しそうに風鈴をならし②様と会話する若いおヨメさんはおそらく その容姿を武器に過酷な任務をこなしてきたのであろう。小屋から脱走した兎がいると②様が困っていた。こういうところが②様の良いところなのかもしれない・・・この件はお任せしましょう。 乳母①心の声 生まれたばかりの兎は赤ムクレのネズミに似ている。親兎は乳が終わり移動する時に誤って胎児を蹴飛ばしたり踏んでしまう事がたびたびある。死んだそれを近くの木の股に乗せて置くと 森からフクロウがやってきて持っていく。輪廻転生・この世に生まれた証は別の生命を助ける事で次に繋がるでしょう。しかし このことは②様には秘密にしましょうか・・・。 追記②は白牙さんに報告と相談をしたらしい。増えすぎても始末に困るなら全て野に放つように言われたと少々気落ちされていた。納得いかないのならお願いしたらいいと言ってみたが、白牙さんの言う通りだし従う、少し寂しいだけだ・・・とのこと。白牙さんは言ったらしい「兎とともに時間を過ごすのは月光様だけでよろしいかと。」こう返されては・・・白牙さんは聡い方だ。
/69ページ

最初のコメントを投稿しよう!

178人が本棚に入れています
本棚に追加