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夫も寝静まった深夜、私は台所で洗い物をする。
目に刺さる蛍光灯の光が私の腕を照らす。そこには附子色に滲んだ痕があった。腕と、頬が熱を持って痛む。
痣が出来るほどに夫から殴られるのは、珍しい事ではない。でも、それを当たり前とはしたくなくて、なぜあの人と結婚してしまったのだろうと考える事がある。
そしてその度に思い出す。自分を縛り付ける母親から逃げるのを手伝って欲しい。助けて欲しいと、夫から言われたのを。
夫のために私は目指していた弁護士の道も諦め、近所にパートに出て家事を全部担っている。
子供もいないのだから別れれば良いのではないかと思うけれども、それでも私は、夫の助けてくれと言う言葉を、
「今も忘れない」
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