劣情secrets 1

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その顔はこれでもかというくらいだらしなく緩んでいた。 ほんと、分かりやすくて反吐が出る。 対する彼女は、微笑みを絶やさない。 愛想笑いが得意な人だ。 誰にでも違和感なく同じようにその顔を向けることができる。 この男にも、そう、私にさえ。 そうだ、この笑顔。 さっきまで私に向けていたものと、この男に見せるものと、いったいどこが違うんだろう? ・・・分からない。 急に胸が締め付けられるような気持ちになって、私は何も言わずに保健室から出た。 後ろから、彼らが私を呼び止める声がしたけど、振り返らなかった。 廊下にはまだ残暑が残っていて、振り切るように速足で歩いたけれど、しつこく私の足にまとわりついてきた。
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