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手首に感じる熱い体温に、初めて手首を掴まれたあの日を思い出す。
あの時と違って追いかけられてるわけじゃないから、全神経が手首に集中してしまう。
そのまま人ごみから引きずりだされるように、ホームの端まで移動した。
「すみれちゃん、大丈夫?」
「だ、いじょうぶ……。ありがと……」
人波を避けられたところで、つかまれていた手はパっと離れた。
当然のことなのに、私はそれを寂しく感じてしまう。
だんだん欲張りになっているのかもしれない。
俯いてじっと手首を見つめていると、視界に桐谷くんの手が差し出された。
「え?」
「手、繋いでく?」
桐谷くんは笑っている。
まさかまた私の感情ダダ漏れ!?
「い、いい! いいです!」
慌ててぶんぶんと手を振ると、桐谷くんは私が持っている巾着袋の紐をちょんと掴んだ。
えっと思っていると、「じゃあこれで。すみれちゃんはぐれちゃいそうだから」と笑顔で私の巾着袋を引いた。
つられて歩き出すと、なんだか散歩されてる犬のようにも感じる。
桐谷くんはどう思ってこんな行動を取るんだろう。
ひとつの巾着袋を紐を二人で持つ、そんな些細な行動で、私の心臓がこんなにも弾けそうになってること、桐谷くんは知っているんだろうか。
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