二人で見る花火

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だってさっきから歩くたびに、桐谷くんの小指が私の手の甲をかすめるんだもの。 心臓がもたないよ。 「失敗だった?」 「え? 何が?」 顔の赤みをどうにか引かせないだろうかと懸命に考えていたら、急に話しかけられてビックリして顔を上げた。 斜め前を歩く桐谷くんはちょっと困ったような笑顔で巾着袋を掴んでる手に視線をやった。 「すみれちゃん、黙っちゃったから。嫌だった?」 「ぜ、全然……! 嫌とかじゃなくて、ただ緊張するなあって思っただけで!」 「うん。そう思って手はやめといたんだけど」 「はは……。私にはやっぱハードルが……」 自分が情けなくて乾いた笑いをこぼすと、「ハードル?」と桐谷くんは不思議そうな顔をした。 「あ、ハードルじゃなくてラグビーのゴールだった」 「何? ゴールって」 「えっとつまり……ハードルが高すぎるっていうか。私には男の子と出かけるなんて100年早いよって話……」 本当は「桐谷くん相手だから」ハードルが高いんだけど、本人を前にしてそんなことは言えなかった。 だけど桐谷くんはツボに入ったみたいで、ケラケラと笑いだした。 「100年!? 俺そんなに待ってられないんだけど」 「それはえっと……実際に待てってことじゃなくて、永遠にムリってことの比喩です」
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