二人で見る花火

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もらったビニールの袋を抱き締めるように抱えると、ふんわりと甘い香りが鼻腔をくすぐる。 その匂いを嗅ぐと気持ちまで柔らかくなっていく気がした。 ヤバい、私。 まんまと甘いモノにつられてる? 「似合うな。わたがし」 「……どういう意味でしょうか」 フフンと笑うレントくんは意外に子どもっぽい印象だ。 切れ長の瞳も見慣れれば怖くない。 そのまま元いた場所へと戻るレントくんの後をついて歩いていると、急にレントくんが立ち止まったから、Tシャツの背中におでこをぶつけてしまった。 「おっと」 「……レントくん?」 「ちょっとこっち」 そのまま私の手首をぐいと引くと、駅方向には戻らずにお祭りの奥へと人ごみの中を歩き始める。 「な、なんで? どこ行くの?」 優しく引いてくれた桐谷くんの腕とは違って、レントくんのは遠慮がないというか、痛いくらいだ。 それが私の不安を助長させた。 「私、桐谷くんのとこに戻らなきゃ……っ」 「今はヤバい」 「だからなんでっ?」 「センコーがうろついてる」 「……」 その瞬間の私の心境を声にするなら、間違いなく『ひぃっ』だったろう。 叫ばないように咄嗟に空いた手で口を押さえたけど。
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