花火の終わりに

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「食べていい? それ」 「え? う、うん。……桐谷くんわたあめ好きなの?」 うなずいてわたあめの袋を手渡すと、桐谷くんは袋を開けてわたあめをちぎると口へ放りこんだ。 瞬間、「あっま」と顔をしかめる。 「……嫌いなの?」 「ガキの頃は好きだった気がするけどなー。こんなに甘かったっけ?」 「わたあめだもん。甘いよー」 べーと舌を出す桐谷くんがなんだか可愛くて笑っていると、桐谷くんがちぎったわたあめを差し出してきた。 ……顔の前に。 「えっ?」 「すみれちゃんも食べていいよ」 「あ、ありがとう……?」 たぶんどう考えても「あーん」の構図だったと思う。 私の自意識過剰を抜いて考えてもそういう距離だった。 だけどここで可愛くパクッとかぶりつくような高等技術を持ち合わせていない私は、戸惑いながら手で受け取ってしまった。 「ん? なんか変?」 「食べてもいいよって、だってそれ私のなのに。変なの」 照れ笑いで恥ずかしさを誤魔化す私に、桐谷くんは「没収」と笑った。 「え?」 「俺と来てる女の子が、他のヤローに買ってもらったわたがし抱えてるとか、嫌じゃん」 「……」 そうか。 そう言われてみると、なんか私、失礼なことしたのかも。
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