夏が過ぎたら

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花火大会の帰りは、時間が時間だから家まで送りたいと言う桐谷くんと、それだけは避けたいという私の間で少しの攻防があった。 結局私は家のすぐ近くまで送ってもらい、角を曲がって家に入ったところで桐谷くんに『無事家に着いたよ』のメールを送ることで難を逃れることができた。 絶対無理だと思ったメールの送信ボタンも、必要にかられれば難なく押せるもので、その日から私と桐谷くんはメールをする仲になった。 私が返すメールはホントに短くて、そっけなさすぎるかなと自分で心配になってしまうものの、意識すると可愛い文面なんて作れない。 緊張から解放された私は早々にお風呂に入ってベッドに転がってしまったから、その日お父さんが何時に帰ってきたのかは、分からなかった。 次の日のお父さんの様子をこっそりうかがってみたけれど、昨夜何があったかなんて、いつもと同じお父さんからは読み取れなかった。 桐谷くんは夏休みは補習で毎日学校に行っているらしい。 メールをすれば会えなくてもこうして、桐谷くんの日常を知ることができる。 たぶんだけど、桐谷くんは進学するんじゃないだろうか。 だから補習授業がたくさんある気がする。
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