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「どういうことだ」
お説教は現状把握から始まった。
いつもならリビングダイニングに直行して、そのまま晩御飯になるのが我が家の日常なのに、今私は普段使われていない和室に正座させられている。
お母さんもただならぬ空気を察して顔すら出さない。
光沢のある木の大きなテーブルを挟んで、目の前に座るお父さんは厳しい顔。
いきなりどなりつけられたりはしなかったけれど、状況は決していいものとはいえない。
「どういうことって……」
「どうしてお前がうちの生徒と歩いているんだ」
「……」
「アイツと付き合ってるのか」
気が長い方じゃないお父さんは、いきなり核心へと切り込んできた。
ゴクリと喉が鳴る。この後に及んで私はなんとか誤魔化せないだろうかと往生際の悪いことを考えてしまった。
だけどこの場を逃れたところで問題は何も解決しない。
いつかは向き合わなきゃいけないんだと自分を鼓舞して、決意を持ってうなずいた。
お父さんは自分で訊いてきたくせに驚いた表情をした。
引っ込み思案な私が男の子と付き合ってること自体、お父さんの中では予想外だったんだと、今初めて気づいた。
そしてお父さんが受けているであろうショックを想像すると、娘としては心が痛かった。
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