不穏

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「き……桐谷くんが、陸南生だから……?」 「ああ、そうだ」 お父さんは議論する余地がないとでも言うように、即座に回答した。 だけどそんなので納得なんてできるわけがない。 「り、陸南生だからって、ひとくくりにしないで。私も今までは陸南生は全員不良で怖いって思ってたけど、そうじゃなくて陸南生でも真面目な人も優しい人もたくさんいて……」 握りしめた自分の拳を見つめたまま、涙声になりながら一生懸命力説した。 だけどそれもお父さんにバッサリ切られた。 「そんなことは分かっている」 「じゃあ、なんで……!」 勢いよく顔を上げるとポロっと涙がひと粒頬を伝った。 お父さんはハッとしたように瞳を見開いたけれど、すぐに元の厳しい表情に戻って見ないフリをした。 どうして。 どうしてお父さんは私の気持ちを見ようともしないの。 私の目の前にいる人は誰? これじゃまるでただの『先生』じゃん……。 悔しい気持ちが涙となってポロポロと瞳から溢れた。 ずっと、お父さんと戦う勇気なんて自分には持てるか自信がなかった。 だけど現実はもっと厳しくて。 どうしよう、桐谷くん。 私、お父さんに向き合ってすらもらえないよ……。
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