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涙目のまま、それでもお父さんの次の言葉をじっと待った。
この先、納得いく答えがもらえるとも思っていなかったけれど、このまま引き下がることなんてできるはずもない。
お父さんはふーっと大きなため息を吐いた。
目を閉じて眉根を寄せて、自分の指で眉間のシワを撫でる。
お父さんが悩んでいる時の仕草だ。
私をどう説き伏せようか考えてるんだろうか。
「桐谷は……」
お父さんの口から出る桐谷くんの名前にピリリと緊張が走る。
「知らないんだろう。すみれが俺の娘だなんて」
「え……」
予想外の方へ話が流れて、一瞬ポカンとした。
「知らないんだろう?」
断定的にもう一度訊かれて、私は戸惑いながらも頷いた。
確かに言ってない。
いつか言わなきゃいけないことだとは思っていたけど、それが桐谷くんと付き合っちゃダメな理由?
私が戸惑っているとお父さんはその先の答えをくれた。
「知ったらすみれとはもう付き合わないだろう」
「え……」
嫌われたくないから言えない事実だったけれど、人からそんな風に断定されるとは思わなくて、頭を殴られたみたいに衝撃で脳がぐわんぐわんと揺れている気がした。
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