不穏

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「どうしてそう思うの……?」 震える声で私はそれでもお父さんに続きを促していた。 『学校の先生の娘』だからって、絶対に嫌われるとまでは悲観していなかったのに。 お父さんはそこまで学校で嫌われてるんだろうか。 お父さんの娘の私と付き合うのがそんなに恥ずかしいことなんだろうか。 「去年の夏祭りで暴力事件を起こしたうちの生徒が、補導されて退学になった」 「……え」 「彼を警察に引き渡したのは、お父さんだ」 その話は桐谷くん本人から聞いたことがあった。 でもそれはレントくんの話をしていた時だったはずだ。 「そ……れと桐谷くんに何の関係が……?」 「桐谷が兄貴みたいに慕ってた生徒だ。退学処分が決まった時、校内で暴動が起きたほど人望が厚かった。暴動の主導者は桐谷でその時、桐谷は二週間の停学処分になった」 「え……?」 「お前は桐谷のことを何も知らない」 断定された言葉に反論の余地はなかった。 だってそれは私の知らない桐谷くんだったから。 「桐谷もすみれのことを何も知らない」 お父さんは私を言いくるめたのに苦々しい表情をしていた。 お父さんだって自分の存在が娘の恋愛に影響するとは思っていなかったんだろう。
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