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ドラマみたいに家を飛び出して走ったりはできなかった。
お父さんは私を家に閉じ込めたりはしなかったけれど、自由を与えられても私はどうしたらいいのか分からなかった。
ただトボトボと二階へ上がり、自分の部屋のベッドに潜り込む。
こんな時、大好きな人の声が聞きたいと思うけれど、今はそれもできなかった。
桐谷くんの声を聞けたとして、何を言っていいのか分からない。
全てを打ち明ける勇気は今の私にはなかった。
嫌なことを後回しにしてきたツケが回ったんだ。
黙ってるのは騙しているのと同じ。
そんな簡単なことも分からなかった。
どうしようもない。
そんな言葉がピッタリだった。
このまま黙っていて付き合い続けるなんてできるわけもないし、悩んだところで私に残されたのは真実を打ち明けるという道しかない。
その先に希望がなくても引き返すことはできない。
だってもう。
こんなに好きになってしまった。
気持ちはなかったことにはできない。
ダメだって分かってても今更やめるなんて無理だよ、お父さん。
その夜は幸せだった数時間前までの自分を思い出しては、どうにもならない現実にむせび泣いた。
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