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レントくんギター弾けるんだ……。
そんなことに気を取られてボーッとしていたら、私の顔に向かってレントくんが服を投げつけてきた。
「ぶっ……、な、何……!?」
「服。制服乾かしてきてやるよ」
「へ!?」
「すぐそこコインランドリーあるから」
「い、いい! いいです!」
思わぬ申し出にビックリして後ずさる。
まさかこんなところで着替えまで借りるわけにはいかない。
「びしょ濡れじゃん。そんな格好で座るなよ」
「あ……そ、そうだよね。ていうか! 私の家ここから近いから、家に帰った方が早いし!」
「じゃあなんであそこにいたワケ?」
「えっ……」
「家すぐなんだろ? 家に帰ってりゃよかったじゃん」
私は答えられずに黙ってしまった。
レントくんはするどい。
「家に帰りたくない理由があったんじゃねえの?」
「……」
だけどそれは今の私を見てれば、誰もが考えつくような簡単な推理かもしれない。
「俺が戻ってくるまでに着替えてろよ」
レントくんはそう言い残すと部屋を出て、階段を降りて行ってしまった。
私はしばらくレントくんに投げつけられたベージュのトレーナーを抱えて、その場に立ちつくしていた。
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