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先に口を開いたのは桐谷くんだった。
「学祭のさ……」
「え……?」
「準備、進んでる?」
「う、うん……」
突如、切り替えられた話題に戸惑いながら返事をした。
それと同じくして桐谷くんがゆっくりと私の身体に回した腕の力を緩める。
身体が自由になるのを感じるのと同時に、心許ない不安が身体中を巡る。
私はうつむいて床に敷かれたラグマットを見つめながら、さっき桐谷くんが言ったことの意味をずっと考えていた。
「見に行っても、いいんだっけ?」
「え、うん」
それはこの間した話のはずだ。
私は疑問に思いながらもうなずいた。
「学祭が終わったらフォークダンスとか、あるの?」
「フォークダンスっていうか……皆で輪になって踊るマイムマイムとかだから、あんまり皆参加してないよ……」
一応、お嬢様学校という手前からなのか、男女ペアになって踊れるようなイベントは用意されていない。
「そっか」
「うん」
「文化祭、行くから」
「……うん」
「文化祭終わったら話がある」
ドキンと心臓がわしづかみにされたような衝撃を受けて、弾かれたように顔をあげると、困ったように微笑む桐谷くんと目が合った。
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