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レントくんの家は普通の一軒家だった。
玄関に入ると独特の『他人の家』の匂いがする。
「上がれば?」
レントくんはもう私の手を離していて、さっさと靴を脱いで廊下を歩いて行ってしまった。
「え」
私はここまで来てまだ家に上がることをためらっていたのだけど、このままレントくんの姿が見えなくなってしまったら心細いと思って、慌てて靴を脱ぐと小走りにレントくんの後ろ姿を追いかけた。
奥にはすぐに階段があって、レントくんは二階へと上がって行く。
階段を上がってすぐに両側にドアがあって、レントくんは右側のドアを開けて中へ入った。
そこがレントくんの部屋なんだろう。
だけど桐谷くんを待たせてもらったところで、私の制服はずっしりと濡れて重みを増している。
こんな格好で待ってるのもおかしいし、やっぱり一旦家に帰った方がいいんじゃないかな……。
レントくんの部屋まで来てやっとそんな結論が出るなんて、私ってば決断力がなさすぎる。
レントくんは私の存在なんて空気かのように、私に背を向けたままクローゼットを開けて何か探している。
そっと部屋を覗いてみると、雑誌や漫画が散らばっていて、ベッドの脇にはギターが立てかけてあった。
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