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「あ、あのね。公園じゃないの。制服が濡れちゃったから今乾かしてて……。も、もう乾いたと思うから着替えて行くからもう少し待ってて……」
『は? 乾かすってどこで?』
「コインランドリー……」
『すみれちゃん今どこにいるの?』
「レントくんの家……」
会話をしながら桐谷くんの声に不審の色が濃くなっていくのが分かって、私は不安に思いながらも正直に今いる場所を告げた。
そしたら電話は唐突に切れてしまった。
顔を見て話したいと思っていたのは、何も桐谷くんを怒らせるためじゃないのに。
玄関に座ったまま頭を抱えていると「タク帰ってきたって?」とレントくんが階段を下りてきながら声をかけてきた。
「う、うん。ありがとう。私、もう行くね……。この服洗って返すから」
「あー、べつに洗濯機につっこんどきゃいいだろ。脱いだらタクに渡しといて」
「でも……」
そんな押し問答をしていると、玄関の扉がガチャリと開いた。
一瞬、レントくんのお母さんでも帰って来たのかと思って緊張したけれど、姿を現したのは制服姿の桐谷くんだった。
「あ……」
「帰るよ。すみれちゃん」
そう言うと桐谷くんは、座り込んでいる私の腕を掴んで勢いよく引いた。
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