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桐谷くんの部屋に入ると、桐谷くんは私に座るように促すと、自分はそのままクローゼットを開けて中を漁り出した。
あれ、これってさっきのレントくんと同じ構図だ……。
そんなことを考えていると、桐谷くんはくるりとこちらに向きを変えた。
手には本当にさっきのレントくんと同じトレーナーを持っている。
だけど桐谷くんはレントくんと違って、私にそれを投げつけてきたりはしなかった。
持ったまま私の前まで歩いてきて、私を見下ろすと、「脱いで」とひとこと言った。
「え?」
聞き違いかなあ、なんて自分に都合の良い方に考えて愛想笑いで固まると、桐谷くんは中腰になると座っている私のトレーナーの裾を両手で掴んだ。
そのまま一気に引き上げられると、驚いて抵抗する間もなく私の腕は『バンザイ』の形になって両腕からスポッとトレーナーが抜けた。
「きゃあっ」
反射的に声を上げるのと同時に、今度は頭からスポッと別のトレーナーを被せられる。
恥ずかしいと思う間もない一瞬のできごとに、頭がついていかないでいると、そのまま桐谷くんがトレーナーの上から私に抱きついてきた。
「え……」
さっきのビックリよりももっと驚いて、今度こそ心臓が止まるかと思った。
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