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だって私の顔のすぐ横にあるのは桐谷くんの首筋で、意外に色が白いことや、近くで見ても肌がすべすべだってことが分かるぐらい近い。
柔らかそうな猫っ毛が私の髪に触れている。
そして身体を拘束する力強い感触。
細身に見えてもしっかり男の子なんだと分かる。
お父さん以外の男の人にこんなに近づいたのは初めてだった。
「桐谷くん……?」
心臓がバクバクいっている。
こんなにくっついていたら、きっと桐谷くんにも伝わってしまう。
私の方は自分の心臓の鼓動がうるさすぎて、桐谷くんのものなのか自分のものなのかすら、分からないけれど。
「なんで……?」
息を吐き出すように言った桐谷くんの言葉の意味が分からなくて、心臓がざわざわした。
昨日、お父さんからあんな話を聞いた後だったから。
それを知らない桐谷くんが、そのことについて何か言ってくるとは思えないのに、どうしても不安で身体が緊張してしまう。
だけど桐谷くんの続けた言葉は私の予想とは違うものだった。
「なんでレントなの……?」
「え?」
「なんで濡れたすみれちゃんに服を貸すのが俺じゃなくて、レントなの……?」
「え……」
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