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八幡城
八幡城へは新橋の手前にある神農薬師のすぐ脇から登れる。
俺は自転車があるので、安養寺の裏から車道を上がった。
澄み渡る昼前の空の下で、裏の高校のすぐ目の前にある天守閣辺りの展望台から屋根の色とりどりの城下町を眺めた。
蝉の声は、9月になってもまだ止まない。
旧友が、俺の耳元で囁いた。
「今日、踊り納めやぞ」
俺は即答した。
「女房子供が待っとる」
そう言いながら宗祇水辺りの河原を目に留めたとき、石畳の坂を上がってくる少女の面影が頭をよぎった。
雑然とした町並から背を向けると、遠く稚児山へと連なる吉田川沿いの急斜面が見えた。
ここは冬の夕方になると、長良川沿いの山の向こうから低く差し込む西日を受けて、ぞっとするほど赤く冷たく輝くのだ。
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