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彼に話の続きを聞けたのは半年経った夏の暑さが残る秋だった。感動は薄れてしまったが、やはりプロポーズだった。私は二つ返事で答えると、滞りなく挙式の準備が進められた。二体の幽霊は消えてくれないが、実家の花見は来年から無くなるだろう。そう思うと私の心は軽くなった。
庭の桜が満開になった日、私達は結婚式を挙げた。
友達の余興も終わり、皆んな笑顔のまま披露宴も終盤に差し掛かった。今まで生きてきた中で一番幸せだった。
「ここで新婦、咲さんのお父様からのご依頼で、お庭にある桜の木をライブ映像でスクリーンに映し出させていただきます」
「えっ?」
照明が消え、今朝家にセットしてきたカメラを通じて壁一面のスクリーンに満開の桜が映し出された。「うわー」と歓声が湧く中、ネクタイの曲がったままのタキシードを着たお父さんが、立ち上がり一礼する。
「綺麗な桜だね」
隣の彼も少し驚いた様子だったが、私に顔を近づけ小声で言った。それを無視するように真っ直ぐお父さんを見る私の眉間には皺がよっていた。幸せな気分だったのに、最高の気分だったのに、突然私達の知らない事を勝手にするこの人、やはり桜なんか無くなればいいのに!
ゆっくりと歩いてスクリーンの横に立つお父さん。更に一礼して、マイクを握る。
「えー、この木は我が家に代々伝わる御神木でして――――」
「もう......やめてよー」
誰にも聞こえ無いような小さな声で言う、会場全員がスクリーンと、その横に立つお父さんに注目した。どうせ不毛な事だろうと、私は恥ずかしさのあまり俯いた。
「咲、結婚おめでとう。お母さんも喜んでるよ」
......何言ってんの? 御神木だから? 死んだお母さん? バカじゃないの? 私は俯いたまま顔を上げなかった。
最悪――――
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