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御神木
桜の咲く季節に産まれたから咲と名づけられた。
私の家には大きな桜の木がある、この木の下で毎年お婆ちゃんが中心となり、家族で花見をする。それが我が家の決まりだった。暖かい日差しの中、小学生迄はその行事が楽しみだったが、中学校入学につれて煩わしく感じるようになった。
無口で不器用なお父さんはお婆ちゃんの言いなりで、私に同じ事を言ってくる。唯一この家で私の味方だったお母さんは、私の中学卒業を楽しみにしていたが、それを見る事無く、病気で他界した。
「お婆ちゃん、今年はもういいよ」
「ダメじゃ、御神木は大切にせにゃならん」
「神木って、それただの木じゃん!」
「咲は何も分かっとらんっ、いいか、今年こそは絶対に参加するんじゃよ!」
毎年お婆ちゃんと言い合ったあげく、私が花見に参加する事は無く、高校を卒業した翌日、家を出た――――
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