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「あのさ、盛り上がってるとこ悪いんだけどさ」
声の発せられたほうを眺めると刈り上げ短髪の大人しそうな中学生が立っていた。
佐野 海賀 俺の仲の良い男友達だ。
「あ、カイさん?」
香苗が振り向く。
「あらカイじゃない? いつの間にいたの?」
「香苗ちゃんと一緒に来てただろ……全く」
香苗と優芽がそう呼んだように俺達は彼をカイと呼んでいる。あまり喋ることは無いせいかよく影の薄いといった扱いをうける、そんな奴だ。
「うん、あのねカイさんがずっと後ろについて見守ってくれてたんだよ~」
香苗が言うようにカイは無口だが冷静にいつも周りを見ていて、いざというときには直ぐにフォローしてくれるようなしっかりした奴だ。
カイはほんの少し瞳を閉じ溜め息をつくと、断固たる眼差しで語りだす。
「僕達がこんな町外れの森林に来た理由忘れてないか?」
一同に一瞬の静寂が走る。
「あ~」
そう、カイが言うように俺達は目的があってここに来ている。
話は少し戻るが、香苗が昨日この森の何処から謎の発光を見て、助けを呼ぶような声を聞いたと言うのだ。
「香苗ちゃん、その……っ、その光はこの先の森から出てたの?」
優芽の問い掛けに香苗は静かに頷いて応答する。
優芽は両腕を組み、左右の肩に手を置きながら身を縮こませてカタカタと震える。
「ひぃ~ 幽霊だったりしたらどうしよう~」
「なんだよ、優芽は怖いのかー?」
「だってウチ、幽霊とか苦手だからしょうがないでしょー」
まあ、そうだろう。女の子はその様な霊現象的な話は苦手であり、それは優芽だって例外では無い。男ならここで女の子が抱きつく展開を期待するが、俺はそれを優芽に求めていない。
そんなこと言うと優芽はキレだすから言わないけど。
俺は、両手の平をパンと叩いて全員をまとめる号令をかける。
「さてと……じゃあここがはぐれた時の集合場所な、あまり奥まで行き過ぎず、単独行動はしないこと。もしはぐれたら直ぐに集合場所で待ち合わせな」
その一声とともに男子二人は少しずつ歩きだした。
「あばばばばばばば」
香苗は未だに震えたままの優芽の手の甲に自分の手を置き、胸へと運び両手で包んだ。
「さあ、いこう~ 優芽おねいちゃん」
「うん、ありがとう……」
そのまま香苗に手を引かれながら優芽も歩きだした。
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