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― 今度こそ、きっと…… ―
随分と人々が足を踏み入れていないであろう山奥の森林、その奥から囁くような声が聞こえてくる。
― 今度こそ! きっと! ―
地面には手付かずの雑草が無造作に生い茂り、数多もの木々が根を張り巡らせている。立ち並ぶ木々の枝葉達が天を覆い光を奪わんとするが、僅かに空いた隙間から漏れる陽光が森林を薄く照らしていた。
その場所には随分と大昔に人が作ったであろう、しかし現在は誰も通っていない荒れ果てた細道があり、正体不明の声はその先から聞こえている。
その道を数分程度歩いた先には円乗に広がった土地があり、中心にはもう誰も手入れしていない朽ち果てた社があった。
空をふさいでいた枝葉ではあるが、その広場の中心は塞ぐ事が出来ず、その社を輝くように眩しい陽光が照らしている。そこには太陽の光とは思えないような青白い球体があり、発光し輝いていた。
― 今度こそ! きっと! ―
声は明らかにその中から聞こえてくる、弱々しく掠れた声で、しかし決意を纏ったとような強い意思を持って。
― 誰か力を…… 貸……て欲し…… 大好きな… 町の……人々の……ために…… それがあたしの夢だから…… 力を…… お願い……… ―
その声は繰り返す。まるで優しさも希望も、悲しみも絶望も、全てを纏うような意思を持って何度も聞こえてくる。
― そして、自分の夢を叶えると叫び続けていた ―
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