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「ふう、やっと追い付いたよ。お兄ちゃん」
気づくと優芽の少し後ろに綺麗な黒髪ストレートの少女が立っていた。
髪は背まで届いており、額には白のカチューシャをつけている。そこから見える小さなおでこが可愛らしい。
身長は優芽の肩に頭の先端が届く位だ。
加山 香苗、彼女が俺をお兄ちゃんと呼ぶ通り妹だ。
香苗が俺達の前に現れると、優芽は電光石火の如く振り返り、腰を曲げ前屈みになりながら香苗に話しかけた。
「香苗ちゃん大丈夫~? 疲れてない?」
「うん、大丈夫だよ~ ゆったり歩いて来たから」
香苗は首に掛けていた水筒の蓋を開け、中の小分けできるコップを一掴みすると冷たい麦茶を注ぎそれを優芽に差し出した。
「どうぞ~」
成る程、よくよく見ると優芽の額から汗が弧を描き垂れていた。香苗は幼いながらも気配りのできる自慢の妹である。
「わぁ~ ありがとう。香苗ちゃん大好き~」
優芽はそのコップを受け取るとスッーと顔を上げながら一気に飲み干す。そのまま綺麗なハンカチを取り出しコップを拭くと香苗の水筒へ返した。
優芽はニコニコと笑いながら、しばらく無言で香苗の頭を撫でるとそのまま軽く抱擁した。
「流石、香苗ちゃん。良い子だね~」
「えっへっへ~♪」
大人しくて心優しく可愛らしい香苗に優芽はメロメロだ。
その様な光景を眺めていると、ボソボソと心霊現象と間違えてしまいそうな声が聞こえた。それは紛れもない優芽の陰口であった。
「全く、香苗ちゃんはこんなに可愛らしいのに兄の拓也ときたら、なんで妹をほっておいて駆け出すバカ兄貴になっちゃったの……」
本人はギリギリ聞こえてなさそうと思ってそうなので、ポジティブに聞き間違えたかのように言い返した。
「あ~ 心霊現象のような声でよく聞こえないけど、そんなに誉めるなよ~」
優芽も負けじとボソボソ呟き続ける。
「あ~ハイハイ、あんたはポジティブで良いわね~」
そんな下らないやり取りを続けていると、何処からか別の人物の一声が割って入って来た。
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