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俺達が森の探索を始めてから数時間、未だに変わったことは起きず、何の収穫も無いまま森を歩き続けていた。
ふう……っとため息をつきながら辺りを見渡す。どうやらそろそろ日が暮れ始める時間が近いようだ。俺はピタリと止まり後ろを振り向くと、仲間達に声をかける。
「そろそろ時間だし、今日はもう帰ろうか……?」
「あばばばばばばば!」
振り返る先には三人とも全員揃っていて、その中で未だに優芽は震えていた。
「まだ、その状態だったの!?」
思わずツッコミを入れてしまった。しかし余程怖いのか優芽は言い返してこない。
「だ、大丈夫~? 優芽おねいちゃん~」
香苗が首を傾けながら目を細め見つめている。
「うん、大丈夫かな? いや、本当は大丈夫じゃないかもしれないけど、大丈夫じゃないよ~」
「最終的に大丈夫じゃねぇのかよ……」
微妙に優芽が壊れ始めてきたので、俺達は優芽を励ましながら帰ることにした。俺とカイで優芽に声をかけながら歩いているが、優芽はあばあば言い続けている。
三人で歩き始めたが、妹の香苗は立ち止まったまま動かない。その事に直ぐカイが気づいた。
「どうしたの香苗ちゃん?」
カイの問い掛けには答えない。一瞬の静寂が不気味に俺達の心を乱しはじめていた。
「聞こえる……」
「え? 香苗?」
(誰か……力を……)
一同が凍りつく、しかし耳を澄ますと確かに聞こえてくる。ここの誰でもない ……。聞いたこともない子供の様な声が、確かに森の中を走り抜けるように……。
「なんだよ……これ誰の声だよ……」
俺はちらりとカイの横顔を眺める。
「さ、さあ?」
今度は、カイが優芽の横顔を眺めると、今にも泣き出さん位の水沢が優芽の目を覆っていた。
(お願い…… こっちへ……)
「今、行くからね!」
声を発生源を感じ取ると、香苗は一直線で走り始めた。
「おい待て! 一人で行くな!」
俺は急いで香苗を追いかけた。
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